「俺、ポルシェに乗ってるんだぜ」なんて、ほとんど嘘だってわかる嘘を前から好きだった憧れの君についてみた。「ほんとぉ?」君は、興味津々。「こんな嘘、バレバレなのに・・。」僕の嘘は続く。「早稲田大学商学部卒業なんだ。」ほんとは、高卒。「ほんと?すご〜い!」本気で信じる君。はは、すんごく僕のこと信用してくれてるんだな。なんとなく、嬉しいけど、なんとなく複雑。 いつのまにかいいムードになって、いつのまにか付き合うことになった。僕は昔から君のことをすごく好きだったから、それはそれで幸せだったんだ。無理して、友達に頼み込んで嘘の学歴を作り上げたり、ポルシェをレンタルしたり。そんな裏工作が結構大変だったけど、君との幸せはそれ以上に大きかったんだ。 だけど、なんでだろう。いつもは笑顔で笑っていた僕の姿が鏡に映らなくなってきちゃった。そうだね、ずっと嘘をついてきたんだもん。本物なんて、もういらないんだよね、きっと。偽りの自分で充分なんだよ、鏡様には。消えていく僕。 性格もかっこよくして、服装もおしゃれに決めた。ポルシェも乗ってるし、有名大学卒業。こんな僕、誰でも惚れるよね。だけど、本物は、どんどん消えていく・・。 どんどんどんどん、息苦しくなってきた。押し込められてるんだもんね、俺。違う人格に乗っ取られそうだよ・・。鏡に、僕はもういない。 伝えたい、こんな平凡な僕を君に。もうどうなってもいい。嘘はもう充分だ。朝起きて、笑顔のまま、鏡の前で笑っていたい。君は惜しいけど・・しょうがないよ、もともとこんなにも平凡なんだから。 「ごめんなさい。」なにがなんだかわからない君。「今までの僕は嘘でした。」信じることができない君。「最低!」その言葉だけを残し、僕の部屋から出ていった君。後に残る僕は、止まらない涙を拭うのが精一杯だった・・。「こんなに愛していたいんだ、君のこと・・・」いまさら・・気付く・・。 次の朝、僕は鏡に映っていた。でも、やっぱり平凡で不細工で、しかも瞼が腫れている。でもでも、嬉しかった。なんとなく、嬉しかった・・。君を失ったのは惜しいけど、それでもきっとこれから僕は僕に自信が持てる・・。 それから平凡な日々が始まり、平凡な生活をおくった。ポルシェもない、高学歴もない。あるのは借金だけ。でも、笑顔で鏡に映る僕は、きっとそれ以上に大切な存在。 そう、あの日も、いつもと同じように平凡な笑顔で始まったんだよ。ただ、違ったのは一通の手紙が君から届いたことくらいで・・・。 |
|
| ■鏡の中にいない僕 [作詞:花香公寿] |
なにもかもが順調ですべてがうまくいっていた 君に出会ってからずっと 愛される彼氏 愛し合う二人 性格も顔もすべてが僕の理想だった そんな君を手に入れた でも実は平凡で取り柄もない お金 車 学歴 何一つ持ち合わせていない 芸能人に似ているわけでもなく顔もかっこいいわけでもない どこにでもいる凡人 だから思いっきり背伸びした お金だって融資してもらった 髪型もファッションもおしゃれな友達が変えてくれた 性格だってクールに変えた 車だってポルシェをレンタル 早稲田大学卒業の学歴をひっさげたエリート商社マン そんな僕を君は愛している 何でも完璧な偽りの僕を 将来の約束も口だけならいくらでも交わしたくらい でも僕は鏡の中にいない 鏡の中に僕はもういない 自分に嘘をついて君に嘘をついて創り上げた僕は・・ 見えない 僕が見えない 無理矢理作り出した笑顔 壊れていく・・ 伝えたい 君に伝えたい 真実の鏡にかすかに映る消えゆく本物の僕 なにもかもが練り上げられた嘘で固められていた 君に出会ってからずっと 愛される彼氏 嫉妬される二人 どこから見ても僕達は理想だった そんな君を手に入れた時から でも痛み出した心を抑えきれない 虚像 嘘 でたらめ 何一つ本物の僕じゃない 心に閉じこめておいた本物を解き放つことなんてもうできるわけがない 君が好きなのは「この僕」 だから思いっきり背伸びした 友達に頼み込んだこともあった 本当に君のことを愛していたから必至に頼み込んだ どんな過去も作り替えた どんな経験も創り上げた 君が誰になにを聞こうが友の中でさえ創り上げた僕・・ 見えない 僕が見えない わずかに残っていた残像さえ 薄れていく・・ 伝えたい 君に伝えたい 偽りじゃない鏡の中にさえもういない消えた本物の僕 もう絶えられない 僕は絶えられない この胸の苦しさ 抑えきれなくて 伝えよう 君に伝えよう 偽りじゃない鏡の中に消えた平凡で取り柄のない僕を 勇気は嘘をつく時に使うじゃない 嘘を証す時に使うんだ きっと君は信じてくれない 信じれるはずもない きっと君は許してくれない 別れ話 当たり前だよね でも だけど 後悔はしない 鏡の中の僕を取り戻すために 「ごめんなさい」君は何のことかわからず戸惑う 「君に出会ってからずっと・・」 愛された彼氏 嫉妬された二人 もうこの瞬間で消える もう君は僕のものじゃなくなるから・・ 「僕はこんなにも平凡でこんなにも嘘つきです」 震える体を押さえて必至で伝えた 愛された彼氏 愛し合った二人 こんなにも簡単に消える 愛はガラスのように壊れて消えていく・・ さよならを言う僕 信じられない君の涙 完璧な偽りの僕を 君はきっと許してはくれないだろう 口づけの数だけ残る嘘・・ でもこれでよかったんだ これで君は自由になれるから もっと君に似合う 幸せにしてくれる彼氏を見つけてほしいから・・ 止まらない涙 止まらない鼓動 こんなにも僕は君を愛していた 君はきっと許してはくれないだろう 君は僕を恨むだろう・・ でも僕は君を忘れない 君のことを忘れたくはない 愛しているから ふと見上げた鏡に 瞼(まぶた)の晴れ上がった顔の僕がいた・・ 見えない僕はもう見えない はっきりと鏡に映る平凡な顔をした僕の姿 新しい僕はもう偽らない ありのままがやっぱり一番幸せだから あれから数週間過ぎて 君に出会う前のありふれた日々が戻った ありふれた日々のなかでありふれた生活をして過ごした その日もいつもとまったくかわらなくてありふれた僕が鏡の中にいた ただ特別だったのは君から一通の手紙が届いたことくらいで |
| -Go Back Home- |